【桃園】神韻晚會

米国の古典中国舞踊団「神韻」の台湾ツアーが開催されている。

日本に住んでいた時に、何度か広告を見たことがあり、ダンスが素晴らしいので一度見てみたいと思っていた。

今回、台湾各地で開催されるとのことで、オンラインでチケットを購入し、桃園公演を鑑賞した(印刷する必要がないのでありがたかった)。

撮影や録音は一切禁止なので、記憶を頼りに感想を綴る。

音楽と踊りが素晴らしい

日本で見た広告でも言われていたが、音楽と踊りは素晴らしかった。音楽は生演奏で、オーケストラに中国古典楽器(銅鑼、琵琶、二胡など)が加わり、神韻ならではの雰囲気をつくりだしていた。

踊りについては、跳躍・回転がそろっていることに加えて、とにかくダンサーの方の身体能力が高かった。踊りを見た後、自分の体なんだか柔らかくなったような、ひょっとしたら足が頭の方まで上がるんじゃないか、というような錯覚に陥るほど、ダンサーの方が軽々踊って見せるので、終始舞台にくぎ付けだった。

踊りの振り付けは、一部バレエの要素はあるものの、基本的には中国舞踊を専門にトレーニングを積んだダンサーの方が選ばれているだけあり、串翻身、宙返りなどバレエには見られない独特な動きや腕の使い方が随所に見られた。具体的な動きは、公式HPにビデオ付きで説明がある。

神韻芸術団 (日本語)

また、中国舞踊の動きをふまえた衣装や小物の使い方も面白かった。長い袖や、ふきん、楽器、華のような扇子など、パフォーマンスにストーリー性を持たせるための道具もあれば、衣装と相まって、舞台の色の変化を生み出す演出もみられた。

宗教と強く結びついた団体

公演は前半後半とその間の休憩もあわせて合計2時間半だった。前半の踊りはいわゆる古典中国舞踊だったが、後半はストーリー性を持ったものが多く、半分ミュージカルのような内容だった。そして、その内容が、古代中国の昔話もあれば、宗教活動を表すエピソードもあった。クライマックスに近づくほど、宗教色は増した。

古代中国の話で言えば、西遊記や、恋愛ストーリーなど(このはなし、なんとなくストーリーはわかるが、その名前はわからなかった)。そして、宗教活動に近いもので言うと、たとえば現代中国を舞台に、「黄色い教本」を読んだ少女が、身柄を拘束されて、牢屋に放り込まれた上に(見間違いでなければ)処刑されてその臓器が売買される...といった内容もあった。また、最後の舞台では(もはや「真・善・忍」と書かれた小道具が出てくるのだが)、現代の上海を舞台に「この教えは素晴らしい」と布教する人間が身柄を拘束されそうになったところ、神の怒りを招いて上海があわや海に飲み込まれる...といった演出があった。

この「宗教」は、先に述べた文字の書かれた小道具からわかるように、法輪功を指す。法輪功とは厳密には宗教ではなく、気功の修練団体であるそうなのだが、色々な資料をみると宗教と読み取れる表現があり、ここは立場により見方も解釈も変わるのだろうとは思う。詳細はHPにも書いてある。

神韻芸術団 | 私たちが直面するもの (日本語)

中国舞踊でありつつ中国で公演はできない

ニュースや、台湾でときどきみかける活動からわかるとおり、法輪功は中国(というか中国共産党)が警戒すべきものと位置づけている。その背景は以下を読んでいただければわかると思うが、端的にいうと、共産党を震撼させる影響力を持っていたから、ということだろうか...。

磯部, 靖, 2001: 長崎外国語大学・長崎外国語短期大学, 21–32 p.

そういうわけで神韻は「中国五千年の文化」を継承する団体でありながら、中国では公演を行うことができない。厳密には、音楽やパフォーマンスそのものではなく、その背景にある法輪功が、中国共産党とは相いれない存在になっている。だから、彼らの本部がニューヨークにあることに頷けた。

個人的には、後半のパフォーマンスは素直な気持ちで見ることができなかったが、こうした背景があることを理解しつつ鑑賞されることは神韻側としても狙っていないわけではないと思う。

ひとまず、台湾で、これまで見てみたかった舞台を見られたことはとてもよかった。